弱視児の教材

弱視児の教材について

弱視児は低視力や視野障害などの視機能障害による見えにくさのために、生活の中での見る経験が量的・質的に不足しがちです。

見えにくさによる視経験の不足を補い、弱視児の積極的な視覚活用と概念形成を促すためには、外界への興味を引き出し、手を使って物を操作する活動が重要です。

そのためには、見やすく、触運動感覚を通しても分かりやすく工夫された教材および環境を準備します。特に幼児期や、知的発達段階が6~7歳以前の知的障害を伴う弱視児は、工夫された教材を活用し、子どもの主体性を引き出すことが重要です。

ここでは、弱視児の気づきや主体性を引き出す教材を、発達段階(5つの活動期)別に紹介します。

机上の環境について

 弱視児は、対象物をよく見るために5㎝程度の極端に近い距離で見たり、全体を見るために30㎝ほどの距離で見たりしながら、教材を操作します。弱視児が教材に働きかけている時に教材が動くと、上手く操作ができません。盲児と同様に、教材が動かないよう、すべり止めを使用すると効果的です。
一方で、自由構成活動期のブロックの模倣構成のような教材では、弱視児が向きを様々に変えて確かめたり操作したりするため、フェルト地の滑りやすい素材を敷くと、対象児のイメージ通りに向きを変えやすくなります。この点も盲児と同様です。
 また、弱視児の学習では、見やすさへの工夫も重要です。書見台を使えば、見やすい角度に調節できるとともに、教材を提示する位置を目の高さに調整することもできます。書見台は、角度が柔軟に変えられ、背面の色がツヤなしの黒色、マグネットなどが貼り付けられるものであると、活用の幅が広がります。
教材では、容器と入れるものや、ボードと貼るマグネットなどの色のコントラストが高いと分かりやすくなります。例えば、枠の中に白い積木をはめていく学習では、枠の背景に黒い画用紙を敷いて構成物と背景のコントラストが高くなるようにすると効果的です。

教材の見やすさについて

 弱視児が見えにくくても気づきやすく興味をもちやすいように、光るものや蛍光色のもの、原色でカラフルなもの、白黒でコントラストが高いもの、絵の線が太く見やすいもの、絵が複雑すぎないものなどの観点から、教材を工夫しています。

個人差について

各活動期については、目安として定型発達の年齢を記載しています。

弱視児については、活動時期に個人差があります。

弱視児の課題実施年齢についてはページ下方の「参考:弱視児の活動期一覧」を参考にしてください。

活動期ごとの教材

感覚運動活動期(発達年齢:~10か月)

外界の対象に気づきそれに対してリーチングや把持・たたく・振るといった感覚的な操作をする段階です。定型発達児では10か月までの発達段階にあたります。

この時期の活動として、押す・動かす・振る・叩く等により光や音・振動などを発する教具を用いた活動を紹介しています。

感覚運動活動期の教材がテーブルに並べられた画像

出し入れ活動期(発達年齢:10か月~1歳6か月)

手段-目的関係の成立により、ボールを容器に入れる、中からモノを出すなどの目的のために手を使うようになる段階(手段—目的関係理解)です。定型発達児では10か月から1歳6か月までの発達段階にあたります。

この時期の活動として、物を穴に入れたり、袋から出したりする活動(出し入れ活動)や、磁石やシールを貼ったりはがしたりする活動(貼る・はがす活動)を紹介しています。

また、1歳程度の発達段階になると、クレヨンやペンを握り、なぐり書きを始めます。よって、描画活動については、この時期から就学までにかけて紹介しています。

出し入れ活動期の教材がテーブルに並べられた画像

弁別活動期(発達年齢:1歳6か月~2歳6か月)

一方向(一次元)のイメージが形成され、弁別学習が成立する段階です。型はめ課題などでは、はめる板を一方向に回転させて入れるということがイメージできることから、四角や三角のはめ板を、向きを合わせてはめることができるようになります。

定型発達児では1歳6か月から2歳6か月までの発達段階にあたります。

この時期の活動として、形や大小などを弁別する活動や、両手を協応させて棒に物を差したり、棒から抜いたりする活動(抜き差し活動)を紹介しています。

弁別活動期の教材がテーブルに並べられた画像

はめこみ構成活動期(発達年齢:2歳6か月~4歳6か月)

大小・長短・高低などの比較概念が獲得される時期です。比較概念の獲得は空間概念という点では、2次元(垂直と水平)の空間・方向概念の獲得といえます。二つの軸が概念として獲得することにより、始点—終点を意識した円模写や、垂直・水平の成分で構成される十字模写や正方形模写ができるようになります。

この時期には、複数の物を合わせたり組み立てたりすることで1つのものを構成する構成学習が可能になります。

定型発達児では2歳6か月から4歳6か月までの発達段階にあたります。

この時期の活動として、構成活動のうち平面軸上で枠にはめて行うものを紹介しています。

はめこみ構成活動期の教材がテーブルに並べられた画像

自由構成活動期(発達年齢:4歳6か月~6歳)

4歳半で、縦横の二次元方向に加え、水平面という軸があれば斜め方向を理解して構成したりすることができる段階です。

定型発達児では4歳6か月から6歳までの発達段階にあたります。

この時期の活動として、構成活動のうち立体のもので枠にはめずに創造的に行うものを紹介しています。また、ひらがなの拾い読みや線むすびなどの運筆、はさみの学習なども紹介しています。

自由構成活動期の教材がテーブルに並べられた画像

筆順漢字教材(小学生向け)

小学校で習得する漢字を PowerPoint で学ぶことのできる教材です。学年ごとに、「光村図書」「東京書籍」「教育出版」の教科書出現順にファイルを作成しました。

ダウンロードして、パソコンやタブレット端末等で使用してください。

筆順漢字教材のサンプル

参考:弱視児の活動期一覧

弱視児(幼児)の活動期に関する年齢の目安と教材の対応一覧