盲児の教材
盲児の教材について
盲児の概念形成を促すためには、外界に興味を持って手を使う活動を引き出すことが重要であり、そのためには触運動感覚を通して分かりやすく工夫された教材および環境が必要です。特に幼児期や、知的発達段階が6~7歳以前である知的障害を伴う盲児については、工夫された教材を活用し、子どもの主体性を引き出すことが重要です。
ここでは、盲児の気づきや主体性を引き出す教材を紹介します。活動期については、発達段階の観点から5期に分類しています。
教材の導入の仕方について
先生方から、「ひとつの教材をどれくらいやったら次の教材に進んで良いのか」と聞かれることがあります。
活動内容については、その段階をすぎると類する活動は全く取り組まなくなるわけではなく、期をまたいで取り組みます。同じ教材でも、慣れてくると手の使い方が上手になっていったり、子どもが独自の楽しみ方を発見していったりする様子が見られます。子どもが、慣れた教材や気に入った教材、安心できる教材をやりたいという気持ちを大切にしながら、新しい教材も導入し、新しい遊び方に出会えるようにしています。
教材のスモールステップについて
出し入れ活動に、パズルボックスという教材がありますが、入れるものの形によって難易度が大きく異なります。球は角が無く向き合わせも必要がないため入れやすく、卵型や円柱・おはじき・円板などは角がないため入れやすいのですが向き合わせが必要になります。そして、四角板や四角柱・三角柱などは、角があり正確に向きを合わせる必要があるため、難易度が高くなります。
他の教材でもこのような難易度の違いがあります。スモールステップを組み、難易度の違いに考慮することが重要です。
机上の環境について
盲児は、手を通して物に働きかけ、その働きかけた結果も手を通して確認します。盲児が、教材を触ったり、出し入れしたりして働きかけている時に、教材が動いてしまうと、操作がしにくくなります。また、基準点となる教材が動いてしまうことによって、自分が働きかけたことへの結果が分かりにくくなります。教材が、盲児に空間的な方向(上に抜いた、手前に引っ張るなど)を教えるのです。盲児が働きかける時に、教材が動かないよう、すべり止めを使用すると効果的です。特に、感覚運動活動期や出し入れ活動期などの初期的な段階では、教材の固定は重要です。
教材の中には、反対に少しすべりやすい布地などの上で取り組む方が良いものもあります。自由構成活動期のブロックの模倣構成のような教材では、盲児が向きを様々に変えて確かめたり操作したりするため、フェルト地の滑りやすい素材を敷くと、対象児が向きを変えやすくなります。
個人差について
各活動期については、目安として定型発達の年齢を記載しています。
盲児については、活動時期に個人差があります。
盲児の課題実施年齢についてはページ下方の「参考:盲児の活動期一覧」を参考にしてください。
活動期ごとの教材
感覚運動活動期(発達年齢:~10か月まで)
外界の対象に気づきそれに対してリーチングや把持・たたく・振るといった感覚的な操作をする段階です。定型発達児では10か月までの発達段階にあたります。
この時期の活動として、押す・動かす・振る・叩く等により光や音・振動などを発する教具を用いた活動を紹介しています。
出し入れ活動期(発達年齢:10か月から1歳6か月)
手段-目的関係の成立により、ボールを容器に入れる、中からモノを出すなどの目的のために手を使うようになる段階です。定型発達児では10か月から1歳6か月までの発達段階にあたります。
この時期の活動として、物を穴に入れたり、袋から出したりする活動(出し入れ活動)を紹介しています。
弁別活動期(発達年齢:1歳6か月から2歳6か月)
一方向(一次元)のイメージが形成され、弁別学習が成立する段階です。型はめ課題などでは、はめる板を一方向に回転させて入れるということがイメージできることから、四角や三角のはめ板を向きを合わせてはめることができるようになります。定型発達児では1歳6か月から2歳6か月までの発達段階にあたります。
この時期の活動として、形や大小などを弁別する活動や、両手を協応させて棒に物を差したり、棒から抜いたりする活動(抜き差し活動)を紹介しています。
はめこみ構成活動期(発達年齢:2歳6か月から4歳6か月)
大小などの比較概念が獲得される時期です。比較概念の獲得は空間概念という点では、2次元(垂直と水平)の空間・方向概念の獲得といえます。二つの軸が概念として獲得することにより、始点—終点を意識した円模写や、垂直・水平の成分で構成される十字模写や正方形模写ができるようになります。
この時期には、複数の物を合わせたり組み立てたりすることで1つのものを構成する構成学習が可能になります。定型発達児では2歳6か月から4歳6か月までの発達段階にあたります。
この時期の活動として、構成活動のうち平面軸上で枠にはめて行うものを紹介しています。
自由構成活動期(発達年齢:4歳6か月から6歳)
4歳半で、縦横の二次元方向に加え、水平面という軸があれば斜め方向を理解して構成したりすることができる段階です。定型発達児では4歳6か月から6歳までの発達段にあたります。
この時期の活動として、構成活動のうち立体のもので枠にはめずに創造的に行うものを紹介しています。また、この時期には、点字導入の基礎として手の動きをコントロールして線を手でなぞったりする触運動統制活動も紹介しています。
凸線辿り触覚迷路教材
触察で楽しむことのできる盲児のための迷路遊び教材です。5つのステップ、合計78の課題から構成されています。迷路の原図はPower Pointで作成されています。立体コピーしてご利用ください。